人生のおつまみ

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石田衣良さんの新海誠監督への評価〜人の人生観は中々に難しい

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辛辣な言葉で石田衣良さんの新海誠監督への評価。実体験がないから『君の名は。』は作れたみたいに受け取れるんですけど、人の人生への批判的な発言は控えた方がいいなとは思いました。言われた方が溜まったもんじゃないですし、楽しい恋愛体験してこなかったのでしょうねとか言われたら怒りますよ、そりゃ。

本気でこの発言を書いているだとしたら、結構問題です。人の人格・経験を雑誌上で否定しているわけなので。同じクリエイターだからこそハッキリと物を言える側面があるのかもしれないですけど、ここまで言うとなると、いい炎上のネタになってしまいます。

なんか宮崎監督が上で新海監督は下みたいな印象も受けましたから、嫌なものを感じてしまいます。学問では特に哲学では批判しないと学問ではないらしいですけど、主観的な要素が強いエンターテイメント作品でしかも監督の人生を批判するのはちょっと違う気はします。

石田さんも作家で思う所はあるんでしょうし、年頭所感の中で昨年話題になった出来事の一つの例として挙げているんでしょうけど、『君の名は。』観たファンからすると何言っているだ?この人?のように思います。実体験がないから作れたって、それって小説とか漫画への批判でもあると思うんですけど。

働き方への話もあったりするんですけど、石田さんが余裕があるから言えることであって、夏休みに1ヶ月も休み取れるはずないですし、そんなことしたら、夏休みは日本では生活できなくなる。コンビニとか身近なお店はほとんど休みになっているので。新海監督と若者を絡めて、恋をしたりして幸せになってほしいなという気持ちも分かりますけど、石田さんの言っていることの方が理想論だったりします。

 

人って余裕がないと、冷静に物事を見れません。余裕があるからこそ、言えるように言える。作品への批評は、直接の作り手の批判にならないので、大丈夫ですけど、監督の人生経験まで踏み込んで批評するのはどうかなと思います。まったくの他人から人生経験を批判されたらたまりませんよね。

今回の石田さんの話は話題になっていて、はてなブックマークの数も300を超えています(1/7現在)。石田さんへのコメントが多くて、やっぱりまったくの他人の人生経験を勝手に批判するのってダメなんだと。二人が知り合いなら笑って済まされるかもしれませんが、雑誌に掲載する年頭所感で話すことではないです。

君の名は。』が話題になったからこそ新海監督の批判やアンチなどが表舞台に出るようになったんですけど、有名な作家の方が直接批判することではないとは思います。作家はある意味で、世間からズレていないと作品が作れないですから、今回の年頭所感の話も仕方ない部分もあるのかな。

君の名は。』って確かに若い人を対象としていたのは事実で、前半の入れ替わりのストーリーはまさに青春って感じ。逆に後半の彗星落下での糸守町壊滅からは、現実的な自然現象の衝撃をイメージさせて、2011年から多くの人が思うようになった、大切な人との繋がりが大切なキーワードになっています。

だから、10代、20代だけではなくて、その親世代、祖父母世代にも楽しめる映画として人気を博したわけなんで、単純に理想的な恋愛関係から出来た作品ではない。多くの世代に受けたのは、大切な人への想いが映画を通して共感されたためだと僕は思っていまし、『君の名は。』関連のサイトやブログを見ても同じような意見があったりしました。

石田さんと新海さんが懇意で気が置ける存在であるなら、話は変わってきますけど、そんなに面識がないようなので、ハッキリと言いすぎた石田さんが批判されるのは、仕方がないかなと。作家の方ってあまり表舞台に出てハッキリ言いますけど、同じエンターテイメントの分野の方を直接批判するのはよくない。見ている方も不快ですから。

 

たぶん新海さんは楽しい恋愛を高校時代にしたことがないんじゃないですか。それがテーマとして架空のまま、生涯のテーマとして活きている。青春時代の憧れを理想郷として追体験して白昼夢のようなものを作り出していく、恋愛しない人の恋愛小説のパターンなんです。

別に『君の名は。』は恋愛映画ではないですし、ボーイ・ミーツ・ガールはあくまで表層的なレイヤーであって、その奥には大切な人を失いたくない、なんとかしたいという想いがレイヤーとして隠されています。

去年、作家のみなさんが『君の名は。』を批判していましたけど、石田さんも同じような大衆向けの理想的なストーリーが気に喰わなかったんじゃないでしょうか?作家は一癖二癖あって、理想を嫌って自分だけのストーリーを作りたがる傾向があるように思います。

「誰も理解しなくてもいい。特定の人だけマニアだけ共感してくれればいい」的な。それが今回の根本で、理想なんてない、もっと現実見ろよ!的なスタンスが出来たためにこの話が書かれたのではないかと。本当に作家に人達って面倒くさいなと思ってしまいます。

確かに、正論は正論。ただし、それを新海監督の人生と結びつけるのはどうかなと。作品の評価と監督人生は直接関係はあっても、直接結びつけて批判したりするのはおかしい。作品は批判するけど、監督はよっぽどのことがないと批判しない。そんなスタンスでいいんじゃないか。

 

それにしても、高校時代に楽しい恋愛をできた人だからこそ言える台詞なんでしょうね。全員が全員高校時代に恋愛できないですし、受験やスポーツのために高校時代を犠牲にした人も多い。石田さんの発言って若い頃に恋愛できなかった人も敵に回す発言だなと。

若い人には恋愛してほしいと言いますけど、難しいんじゃないかな。石田さんは俗に言うリア充であって、マニア的な作品を作ってきた新海監督とは合わない。リア充目線だと、『君の名は。』理想的すぎて、恋愛したことがない人が作った理想アニメ。だからつまらない。そんな気持ちなんじゃないかな。

別に宮崎監督を引き合いに出す必要もないですし、なぜ比べたがるのか。宮崎監督がマニア的だったらどうするのか。新海監督と宮崎監督の作品はまったく方向性が違うので、比較するのはおかしいとは思います。年頭の挨拶で分かりやすくするために引き合いのだしたんでしょうか?

今回の石田さんの話。正論は正論なんですけど、話の後半ではもっと休んで恋愛しろよ、幸せになれよ!的なことが書かれていて、こっちの方がもっと理想論なんですけどね。そんな長期で休める職業なんてほとんどないです。作家の人だからこそ言えることで、若い人が見たら怒るんじゃないかな。

確かに尖って発言することも大切で、それが作家性に繋がりますけど、作家で面倒くさいと感じてしまいました。もうちょっと世間に迎合して褒めまくってもいいんじゃない。でも、それだと売れる作品は作れないのか……。じゃあ、なんで『君の名は。』は大ヒットしたんだろうか……。