人生のおつまみ

好きなことを基本的にはコラム形式で書いています。スポーツ、アニメ、書籍、産業をネタにしています。

『雨上がりの印刷所』の感想-印刷とネット広告業界から思う出世の方法

印刷をテーマにして、チラシや書籍作りから人を助けるという話が軸であった。最近はネット広告が一気に発達したので、大手以外での印刷関連企業だとこれからは苦しいとも感じてしまった。確かに、チラシなどを使って人々や企業を助けることができる。広告は古くから企業や個人の宣伝媒体であり、知名度などを活かしたマーケティングを広告代理店が行っている。色々思う所はあるけど、広告なしに商品を語ることはできない世の中で、これからの印刷業界はどうなっていくのかなと感じた。


小説の中だと、印刷所で主人公が再起するのだけど、きっかけは取引先に迷惑をかけたためにそこの担当者が辞めてしまったというもの。一つ思ったのは、出世する人って精神的に図太くないといけないということ。大企業にいると、失敗が取引先からの信用に繋がるけど、その範囲が非常に広い。一つのミスで何人もの人達が責任を取って処分が下されている可能性がある。それを気にしていると自分が働けなくなるわけで、人よりも自分が!みたいな人が上に上がっていくのはリアルに感じる。メンタルが強いというのは、他人のことをほとんど気にしない人なのかもしれない。悲しいことだけど、ある意味で『みんな仲良く』というのは幻想なのかもしれない。

雨あがりの印刷所 (メディアワークス文庫)

 

雨あがりの印刷所 (メディアワークス文庫)

雨あがりの印刷所 (メディアワークス文庫)

  • 作者:夏川 鳴海
  • 発売日: 2017/06/24
  • メディア: 文庫
 

 

『子供を読書好きにさせた方法』についての考察-嫌いな事から好きな事へ

□子供を読書好きにさせた方法とは?

子供の頃は読書が嫌いだった。活字を見ると拒絶したし、何が楽しいか分からなかった。そもそも。国語の時間が苦手であり、音読や問題を解く行為が苦痛だった。話がよく分からないこともあったし、それよりは歴史好きとしては古典の方が好きだった。先生も分かりやすく教えてくれたこともあった、勉強していて楽しかった。それはともかく。子供にとって本を読む楽しさは分からないものである。本を読めと言われても、その本が面白いのかすら分からないし、その後の読書感想文などの宿題も苦痛だったのだ。


読書を好きなことを変えた意味で、この記事は非常に有用だ。子供がかいけつゾロリに興味を持った瞬間を見逃さず、シリーズを一気に置いておく優しさ。何でもきっかけと環境づくりが大切だと感じさせる。大学の頃に、物理学が好きな後輩がいたが、親がファインマイン物理学などの理学書を読んでいる人だったから、物理が好きになったそうだ。子供に何かをしてほしい!という前に、子供は今何に興味があるのか、そして熱中している時期を見逃さないことができるかがポイントだと思った。自分もそうだけど、親が好きなものに影響を大きく受けるので、まずは親が読書好きになるべきなんじゃないかと感じた。

 

友人が子どもを読書好きにさせた方法とは - すごい人研究所

www.kakkoii-kosodate.info

『手に入らないマスク』について考えたこと-マスクしないではなく、出来ない

□手に入らないマスク?

今は花粉症のシーズン。マスクは必須のものなんだけど、どこにも売っていない。確かに、コロナウイルスが世界中で蔓延している状況で、マスクをしないとなると人の目が気になってしまう。しかし、コンビニやドラックストアでもほとんど売っていないのだ。最近は、早朝にドラッグストアに並んでいる人達をよく見ているが、どこを探してもない状況なのだ。それで、マスクしろ!というのは無茶な部分もある。まわりにあるコンビニやスーパーを見ても販売していないし、売っていたとしても整理券を配ったりして、社会人が買うには結構厳しい状況である。

 

だから、マスクをしないのではなくて、出来ないと思っている。僕のまわりでもマスクが売っていなくて困っている人がいたし、頑張っても買う事ができない状況なのだ。ネットで、マスクをしていないから喧嘩になったなどという記事を見たが、ピリピリしている状況では仕方がない。とはいえ、マスクがないのはどうしようもない。政府が数百万枚配っているが、日本の人口は1億人を超えている。1ヶ月で10億枚生産できても、たった10枚しか手元に届かないということ。転売などで買い占める人達もいるから、本当に厳しい状況。花粉症のためにマスクをストックしている人を見ると、状況を予想して物をストックしておくのは重要だと思った。

togetter.com

『5分後に意外な結末 桃戸ハル』の感想-超短編で構成された小説。読書感想文の本を選ぶきっかけにして、知識を知恵に変えていきたい。

超短編で構成された短編集。元々は子供向けの作品をセレクションした本で、非常に読みやすい作品集になっている。何回でも読みやすく、子供向けの作品としても大人向けの作品としても面白い小説集となっている。子供に本を読んでほしいと思っている人は、これをあげるといいと思う。色んな人生模様が表現されているし、たくさん短編が載っているから、どれから読んでも満足できる内容となっている。小説として、簡単に読めるというのは大きなメリットだと思う。

 

読書感想文などが毎年夏休みに話題になるけど、結局は何を読んでいいのか分からないという点に収束する。本を読む習慣をつけるには、まずは家に本がないと始まらない。親が読書家だったり、本が当たり前のようにある環境でないと、本を読む事自体が難しい。まあ、宿題をする義務感があれば、本を読んで、感想文を書いて面白かった読書をしようと気にはなるけど、そこまでガッツがあるなら別のことを趣味にしている気もする。最初から難しい本を読むと挫折しやすいので、簡単な本から始めるために、この本を薦めてもいいと思う。

 

本を一冊集中して読むのもいいけど、まずは数をこなして大量の本を読むべきかなと考えている。大学でたくさん本を読めというのは、色んな著者の考え方を吸収して、それをオリジナルな研究に活かせということだから、数は正義。図書館などで片っ端から読んで、それを自分で解釈して知恵を身につけるのが読書の目的。それを達成するためにも、まずは大量に本を読むことが大切。質を高めるために、一冊の本をまず読むべきとも言うけど、その一冊が自分に合わないということもある。取捨選択をするために、多くの本と出会いを大切にするべき。

 

小説にはプロットが必要で、起承転結が基本になっている。短編集ならそれが把握しやすいし、それは映画にも応用されているので、物語の先を読む訓練になったりもする。さらに、ドラマの途中からでもストーリーを把握しやすくなったりするし、結構面白いことになる。僕が最初にハマったのが小説だから言えることだけど、専門書でも似たようになると思う。数をこなして、色んな知識をストックして、自分で考える。考えて仕事や趣味をして、人生を豊かにしていく。結局は、この『考える』ことが大事になるわけで、それを養うのが読書ということになる。

5分後に意外な結末 ベスト・セレクション (講談社文庫)

 

 

『かくりよの宿飯シリーズ 友麻碧』-転職の時期に読んだ、人生を変えてしまった作品。異世界モノだが、料理で対話していくのがキャラの個性だと感じた。

もうエンディングを迎えてしまったシリーズだけど、非常に面白い作品。昨今のあやかしミステリ小説の発端となった作品と言っても過言ではない。あくまで僕のイメージであるのだが、好きなシリーズだけに新作が本屋に並ぶたびにワクワクしながら買っていた。最近はそんな小説がほとんどないので、非常に懐かしい想いがする。とは言っても友麻さんの作品は他にもあって、楽しめるので面白く読ませてもらっている。恋愛要素もあるのだけど、それ以上にあやかしとの関わり方が興味深く、実際の人間関係をイメージしてしまうこともある。


この作品との出会いは、転職活動の時。精神的にヤバくなっていた頃に出会った作品であるからこそ、印象深く長く付き合うことになっている。テンポがよくキャラクターにも個性が感じられるので読んでいて飽きない。かくりよ宿シリーズは異世界転生なんだけど、料理という武器であやかし達と渡り合うのが画期的だ。料理をあやかしを癒しながら、物語が進んでいく。主人公に特異性があるにせよ、典型的な異世界転生とは違って、チート的な行動で物事を解決したりしないところも、主人公を可愛らしく魅せている要因である。キャラが可愛いというのは、作品の魅力の一つだと思う。


人生の転機、僕の場合は転職の時だったけど、その時に出会った作品は何であれ心に大きなインパクトを残すもの。人によっては小説だったり、哲学書だったり、理学書だったりするのだけど、人生を変えたり、きっかけを作ってくれる作品はとても大切になる。難しい本だけが人生のきっかけになるとは思わないし、人生が変わるきっかけってそこら辺に転がっているので、それを如何に見つけてつかみ取るかがポイントだと感じる。色んな想いがあるけど、無限の選択の中で何を選ぶかで自分の人生は変わってくる。


友麻さんの作品は、優しい話でキャラが活き々々している。主人公の女性は芯が通っているが、そこから脆く、それをまわりが助けるという展開で物語が進んでいく。キャラ同士の掛け合いが自分好みであり、ニヤニヤしながら読んでしまう。それでいて、キャラはそれぞれが自立していて、大人だなあと感じるけど、その中に垣間見える幼さや弱さが上手く表現されていて、自分の人生に納得感を与えてくれる。ライトノベル的な作品に分類されていると思う。しかし、異世界モノみたいな無双感はないし、単純にはいかない人間関係もある。気軽に読めて、自分のテンションとやる気を上げてくれる、そんな作品が友麻さんの魅力。

 

かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。 (富士見L文庫)

 

 

 

『NEWTYPE 2020年4月号』の感想-アニメ雑誌を買ったのはひさしぶり。働くようになって声優よりも。スタッフや監督のインタビューや裏話が気になるようになった。

アニメ雑誌をひさしぶりに買ってしまった。劇場版『SHIROBAKO』を見たので、キャスト・スタッフのインタビューを載っているというので購入してみた。インタビューは『SHIROBAKO』に関する愛を感じるもので、愛されているアニメだなあと感じた。アニメ制作の現場をテーマにしているだけに、キャスト・スタッフにも思い入れがあるようだった。それについては非常に楽しめしたし、こーゆー愛のある作品が世の出てくればいいのになあと思ってしまった。


アニメ雑誌ってヲタク専門誌みたいなものだったと、僕が子供の頃はあったと思う。マニアックで表紙がアニメキャラだから、敬遠されやすい。けれど、今はアニメイトやアニメのイベント会場に行っても、オシャレな人達が結構いたりする。若い人も多くて、一つのコンテンツとしてトレンドを生み出しているなと感じるぐらい。2000年代には話題になる深夜アニメがたくさん生み出されたからこその現在だと思う。何だかんだ言って、面白い作品も多く、気軽に見やすくて感動できる作品があったりするからだろうな。


一時期萌え系アニメが流行っていたようなんだけど、今はオールジャンルで放送・配信しているように見える。アクション・恋愛・日常系のアニメがメインなんだけど、働く人間をテーマにしたアニメもあって中々に面白い。SHIROBAKO』もその一つなんだけど、何にでも信念を持って行動している人間はすごく魅力的に見える。やっぱり、適当に流されているよりも、一つの目的と夢に向かって動いている人間はやる気と根性が違う。まあ、夢があればいいのだけど、それがない現代社会が問題なわけでアニメを見て夢を持つのも悪くないと思う。


働くようになると、ドラマやアニメにおけるキャストのインタビューよりも、スタッフや監督のコメントが気になったりする。社会人に出ると色んな人間が働いていて、すごく驚く。スタッフはそれらをよく観察していて、何気ないシーンの中に織り込んでくるから、それに対するコメントやインタビューがすごく気になるようになってしまった。人間、経験しないと分からないことがあるけど、俳優や声優だけがすべてじゃなくて、ドラマやアニメを作るスタッフの仕事も輝かしいものであると働いて感じるようになった。インタビューの一つの言葉に納得する自分がいたりするわけで、モノ作りってすごいなと感じた。

ニュータイプ 2020年4月号

 

ニュータイプ 2020年4月号

ニュータイプ 2020年4月号

  • 発売日: 2020/03/10
  • メディア: 雑誌
 

 

『舟を編む 三浦しをん』 の感想-辞書を作るプロ達。言葉を知っているのも大事だが、日常的に使いこなすことがもっと大事だと感じた。流行語大賞も関係あるかも。

辞書作り。僕は無知でその業界のことをまったく知らなかったけど、『言葉』を定義し、まとめ、辞書として作り出す。すごく尊いことで、しかしほとんどの人が知らない分野だと感じた。中学生か高校生の時には英語・国語の時間には必須である辞書。その辞書作りの一端を垣間みることができる非常に面白い世界だと思った。辞書作りのためには『言葉のプロ』になる必要がある。そのためには、日常的に言葉に敏感になる必要があるし、人とは違う視点で物事を見ないといけない。そう考えると、辞書作りの人も職人である。


何かのニュースで、とある大学の先生が言葉を定義するために、日々観察して、言葉のネタを集めているといったことを読んだ記憶がある。辞書は誰もが使うが、だからこそ間違いがあるといけない。そのために、日常的に使われている定義、昔からある定義などをしっかりと精査して、辞書に載せていく。言葉は生き物で、過去と現在では、使われている言葉自体が違っているように思う。ネット発祥の言葉とかまさにそうだし、何十年前の小説に書かれている言葉はもはや日常的に使われていることがなかったりする。生きている言葉を定義するというのはすごく難しいこと。


毎年、流行語大賞というものがあるが、言葉の影響力を感じる。そこから辞書に登録される言葉も出てくる可能性もあるわけで、まさに言葉は生き物。それらと相対する辞書作りのプロ達は本当に色んな言葉の意味を知って、日常的に言葉の疑問を解決できるようしていると思う。辞書で引く言葉の一つ々々は些細なことだが、作る・書くとなると話は別になる。本当にすごいなあと感じるが、仕事となると好き・得意以上に執念がないと作れない。国語力が落ちていると聞くが、案外辞書に掲載されている言葉から察することができるかもしれない。


言葉は日々生まれている。どう捉えるかがプロの仕事であり、それを上手く使うのが僕たちのやるべきことだと感じた。子供の頃から、辞書を使って勉強なり読書なりをしてきた。語彙力が高いかは分からないが、それなりに知っているつもりである。とはいえ、知っているのと使えるのとではわけが違う。僕たち辞書を使う立場は、言葉を知り、それらを日常的に使いこなすことが大事になる。まあ、毎日言葉を使っているが、そこまで思い入れがなかったのだけど、この小説を読んで、「言葉って大切だが、とても難しく大変」ということを感じた。何気ない言葉の中に深みってある。

舟を編む (光文社文庫)

 

舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

  • 作者:三浦 しをん
  • 発売日: 2015/03/12
  • メディア: ペーパーバック
 

 

『サブマリン 伊坂幸太郎 』 の感想-子供と大人の関わり方。働き方の中で転勤する時に給料を取るか家族との時間を取るかが気になってしまった。

重いテーマだが、劇中キャラの陣内のようにしっかりと自分の信念に則って冗談を交えながら話すというのは子供との対話として効果的かなと感じた。子供との対話がテーマの一つになっているが、大人が子供とどう接するかが問題にもなっている。子育てにも関係があって、いかに教育するか、いかに育てるかは人類がずっと悩んできた問題だと思う。しんどい内容だが、伊坂氏の軽快なリズムと展開で暗いテーマには希望らしきものが見えるようになっていた。チルドレンから時間が経ち、あくまで主人公へアドバイスする立ち位置になった陣内に好感を持ってしまった。

 

子供は感じなかったが、世界は想像以上に広い。小説を読んでいるとそれを感じる。大人になっても自分の知らない分野は数多くあるし、想像することも難しい。テレビやネットの中で世界でさえ、別世界にも思えてくる。そーゆーことを考えていると、子供というには非常に小さいが、だからこそ狭いコミュニティーの中で生きていかないといけないという難しさが出てくる。転職のように簡単に学校を移ることが難しい子供の頃、わがままと親に捉えられるかもしれないという恐怖。子供時代は自由だが、自分の力ではどうにもならない不自由さもあるということを感じた。


最近は、転勤などが働き方で問題になっている。給料が上がるが家族との時間が過ごせないという意見があった。今の時代はライフワークバランスが重要で、給料か家族との時間かで意見が分かると思う。今回の小説を見ていると、子供時代ってすごく大事で、親との時間の過ごし方が大切になってくる。全部が全部正解ではないけれど、転勤という選択肢の中で、家族との時間を天秤にかけることは、特定の職種では必ず出てくる問題。自分一人ならいいが、家族がいるならそりゃ一人の問題でなくなるわけで、そこら辺がこれからの働き方の問題だと思う。


重いテーマで大人と子供の関わり方が軽快だが正面から描かれていた。陣内のように、常識外のキャラがいないと、重すぎて話を展開させるのに苦労すると思う。伊坂氏の物語がそのようなキャラが当たり前に出てくるので、物語として非常に面白く読むことが出来てしまう。チルドレンの時には短編集的な構成だったが、今回は長編であり、前作よりも重いテーマが物語に関わってくる。陣内のように、一見破天荒でも、行動によって印象に残り、信念を曲げない人物はどうしたら生まれるのか、はたして現代社会で生きていけるのかと不思議に考えてしまった。

 

サブマリン (講談社文庫)

 

サブマリン (講談社文庫)

サブマリン (講談社文庫)

 

 

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

 

 

『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』 の感想-阪大の学生と先生達が作った本。ドーナツの穴を学問的に定義するとどうなるのかがすごく気になった。

ドーナツの穴をどう食べるか、残すか。非常に哲学的な問題で、言われてみれば少し考えてしまう。穴にはドーナツの欠片はないわけで、空気の通り道のようになっている。その穴にはドーナツの構成分子はなく、基本的に空気しかない。それを食べる、残すというのは結構深くて難しい問題だ。身近な問題であるが、哲学的で面白く感じる。大学に入ったらこーゆー、一見無意味そうで、考えがいのある思考実験をどんどんしてほしーなーとは思った。ただ、大学生の時の自分に言ったとしても、表面ばかり考えて、哲学的に考えることはしかなかったはず。大人になったからこそ言いたくなってしまった。

 

学生間でドーナツの穴問題などの、哲学的な問題を議論するにはまさに大学生。遊ぶのはいいのだけど、学問をして頭を柔軟にして、大人になってほしいと思う。この本は学生の企画から始まったらしいのだけど、大学時代の思い出として残るし、就職活動の役に立つと思う。別に就職活動のためにしろとは言わないし、自分で考えて企画して実行するというのは仕事でも役立つこと。そーゆー経験を学生の頃にできるのは結構貴重だと思う。タイトルもよく考えているし、書籍としも魅力がある。


ところで、本を作る時には苦労しただろうなと感じた。大人、しかも自分よりも学術的な知見を数多く持っている先生と話すのはすごく大変なこと。理系出身の人だと分かると思うけど、自分と同じ分野の大学の先生と少人数で話す時にはすごく緊張する。知識・知恵のレベル差があるし、問題に対するの経験値もまったく違う。理系だと、数学・物理みたいに客観性の高い学問を学ぶ機会が多いから、自分のミスが間違っているとすぐに分かってしまう。そんな背景もあって、教授を筆頭に大学の先生と話すにはかなりの前準備が必要だったろうなと。先生の話す内容も本の執筆のために理解しないといけないし、自分の意見も出さないといけない。それは別に理系・文系は関係ない。阪大の学生と先生達が作っていたのだけど、さすがは阪大だなと思った。


個人的には、工学的にドーナツの穴を残す方法を考えた内容が良かった。ドーナツを真空蒸着させて全体をコーティングし、穴=コーティングの膜と定義するやり方。コーティングすることで、穴が定義されて、残すことができるようになる。実際にモノとして残すやり方だからインパクトがある。とはいえ、哲学好きの友人が見たら、哲学で残す方法、定義する方法に興味が行くだろうし、要は自分の興味ある、得意な分野で考えた方が答えが出やすいということ。思考実験として結構インパクトがあって面白いので、オススメだと思う。

 

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 (日経ビジネス人文庫)

 

 

『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法 永野 裕之』の感想-なぜをくり返して知識を知恵に

東大出身の著者が繰り出す勉強法の一つ。なぜ?をくり返すのはなぜなに分析で有名だけど、勉強には当てはめることもできるなあと思った。受験にも役立つけど、大学生や大学院生の学問・研究に用いた方が実用的だと感じた。なぜ?と考えることは本質的な問いに近づくために必要なことで、何気ない質問でも、根源的な知識に一歩近づくことになる。簡単だけど難しい、「なぜ?」をくり返すこと。こういうのは、若い頃から考えないと習慣にするにはしんどい。


知識って暗記すればいいけど、実用的に・日常的に使える『知恵』に加工するには時間と経験が必要になってくる。本とかネットのニュースを読んでいると知識は自然と身に付く。当たり前にように見ている情報は意外に頭の中に残っているものである。とはいえ、必要な時に必要な情報を取り出すには、知恵に変換しないと使える情報にできないわけで、それが難しい。趣味とかだと、簡単に知恵に加工できるんだけど、勉強に応用するとなると得意・好きなものでないと中々腑に落ちない。そーゆーことを自然にできるようにするのが大事なのは分かるけど、勉強の楽しさと成功体験がないと難しいように思う


読んでいると、中々にハードルが高い勉強法にもなっているので、ある程度読書したり、勉強したりする習慣がある人向けなように思った。問題集をやりきるには大事だけど、答えを先に見るやり方に少し否定的だったので、頭を使って悩むことを薦めている。資格試験だと、答えを先に見た方が効率的な場合もある。とはいえ、大学時代に数学などで2ページ理解するには何十時間も悩んだこともあるので、悩むこと考えること自体は否定しないし、時間があるならどんどんするべきだと思う。まあ、働き出すと自由に使える時間が少なくなるので、学生向きかなとは思う。

 

勉強って本質は、なぜ?何で?を追求することだと思う。簡単だけど難しい勉強法。まあ、本とか読んでいると自然に考えることだけど、意識して行うとするとどうしても訓練が必要になってくる。受験の時にも役立つと思うけど、時間制限のある試験期間では、過去問を解いた方が効率的な時が多い。高校一年からじっくり勉強できるならいいのだけど、高校3年の夏ぐらいからとなると、中々にしんどいと思うから。とはいえ、思考力をつけるならしっかりと土台を作るという意味で実践的。まずは身近なこと、仕事や趣味についてじっくり勉強する時に役立ててみてはどうだろうか。

 

東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法 (PHP文庫)