人生のおつまみ

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『今の探偵小説』と『昔の探偵小説』について考えてみたー『探偵・日暮旅人の探し物』を読んで

 最近は探偵が活躍する小説は読んでいなかったのですが、今回読んでみた、『探偵・日暮旅人の探し物』は現代チックな探偵で少し驚きました。トリックよりも、個人の能力・まわりの環境・人間関係に重点が置かれていて、時代は変わったなあと感じました。2000年代ぐらいまでは、探偵小説と言えば、トリックに重点が置かれていたと思います。化学・物理・叙述的なトリックがメインで、その上に人間関係や感情が出てくるといった構成がありました。ネットなどでそれ系の小説の感想を見てみると、犯人が誰かを割と真剣に考えていたりして、今とは違った認識で小説を読んでいたようです。私は、小説=娯楽と考えているので犯人は誰でもよくて、それに至った動機や感情が大事と考えています。それに、物理的トリックと言っても、現実的には不可能なものも多かったので、読んでいて何だかなあと思ったりもしたこともありました。現代という時代では、トリックよりも人間の行動や動機が大事で、言うならばイメージしやすい、ドラマ化しやすい作品が多くなっています。古典と呼ばれる作品が、アイドルの表紙にすると飛ぶように売れるように、インパクトやイメージ第一優先主義なんでしょうね。

 

 

 とは言っても、探偵小説は『探偵』がメインですから、それは今の時代も同じ。ただ、『探偵・日暮旅人の探し物』は主人公は特殊能力を持っているキャラなので、時代を反映していると思います。ライトノベル的な小説という感想も見かけましたし、ある程度サクサク読める小説が必要になっているだなと感じました。私も、学生ならいざ知らず、社会人になってからは、一日中小説を読みふけることは不可能になったので、ある程度はラクに読めるライトノベル的な小説は嬉しい。もっと大雑把なくくりだと、ライトミステリなカテゴリになっているので、時間がない社会人や若者をターゲットにしている小説なんだと思います。本が売れない時代と呼ばれていますけど、難しい本は専門家にしか売れないですし、儲けようと思ったら、その他大勢の人に売れないといけないわけで、分かりやすい小説が必要になったという背景があります。トリックがメインの探偵小説だと、話の展開は難しくなりやすいですし、読書好きなら問題ないですけど、今では一般向けではないと思います。私としても、読みやすい小説は歓迎ですし、今のニーズに合っているからこそ、ライトノベルやそれと似ている小説が売れているという事実があるんでしょう。

 

 『今の探偵小説』、もっと言えばミステリ小説はキャラの個性ですべてが決まるんだと思います。平凡な探偵で事件を淡々と解決しても面白くないですし、『なぜこのキャラは特殊能力を持ってるの?』『この探偵の過去は何?』と言った無意識の疑問を呈するようなキャラが必要なはず。そうすると、奇抜な格好やあり得ない能力のキャラが必要になってくるわけで、それが今の探偵なんじゃないでしょうか。私の理想の探偵キャラは、京極夏彦さんの作品の京極道だったり、東野圭吾さんの加賀刑事と言った、知り得た情報から頭脳で解決する人達なわけなんですけどね。頭脳で解決するのは同じでも、この作品の探偵・日暮旅人は視覚で見て、そこから解決していくというスタイルなので、前者二人とはどこか違う気もします。もちろん、魅力がないわけではないんですけど、これが今の時代の探偵なのかなと思ったりもするんですよ。あと、表紙の力も強いです。デザインが秀逸で美しい。イメージピッタリで、最近は他の作家の作品でも同じようなものが使われています。アニメ化とかもしあるならば、このデザインを踏襲して作ってほしいなと思います。

 

 今も昔も探偵小説って本質は変わらないと思います。事件があって、犯人がいて、情報を知って、頭を使って事件を解決する。そのスタイルは変わらないです。ただ、気難しい性格や一本気な性格は時代に合っていないのかもしれません。ちょっとフワっとした性格で人にはない能力を使って解決するのが今風のスタイル。もちろん、すべての小説がそうではないですけど、売ろうと思ったらライトノベルに方に寄せるのがいいのだと思います。探偵として硬派ではなくて、『愛』を追い求めるストーリーになっていて、感動させられる話もありました。シリーズ4冊で大きな一つの話になっていて、基本的には短編集として話が続きますけど、先が気になる展開が多くて何回か繰り返して読みたくなります。特に、それぞれの巻で最初の話は『恋愛』『家族愛』がテーマになっているので少し変わった構成になっているのですけど、話に引き込まれます。実写化もされていますけど、表紙のデザインもあるので、アニメ化で見てみたいという想いもあります。探偵小説としてトリックよりも、人間関係に重きを置いた作品となっていますけど、内容は軽くはないですし、『愛』をテーマにしているので、優しい物語も出てきます。昔の探偵とは違いますけど、今の探偵も若者好きな特殊能力持ちで解決するという魅力もあると思います。