人生のおつまみ

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吹奏楽部(部長・人間関係・勝利至上主義)ー『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』感想

 響けシリーズの集大成の作品を読んだ。主人公の久美子が3年生になり、部長として忙しく活動している。これまでのシリーズよりもかなり重く、心理的描写もあって、すごく読むのが苦しかった。部活動そのものは健全だけど、『初心者VS経験者』『才能VS努力』みたいな構図も見え隠れして、アニメ化するけど大丈夫?と本気で思ったりした。実際に部長ってすごく大変だと思う。会社で言うと管理職みたいなもの。劇中では副部長、ドラムメジャーと共に『幹部』とも言われていて人を動かす、管理するのが一つの仕事。全国吹奏楽コンクールの全国大会で金賞を取ることが目標なのだが、そこに至るまでの葛藤やすれ違いは痛々しかった。特に今回は、自分の立ち位置を脅かす人物も出て来て、いつも以上にゴタゴタしている。

 久美子が3年生になることで、想像以上に人間関係が複雑になっていた。しかも部長ということで、1、2、3年生間の人間関係にも気を配る必要が出てきた。部活動の人間関係って独特だと思う。仕事ではないから強制ではない、ただまわりの空気感があって、それを読まないと自分の立ち位置が確保できなかったりする。今回の話では、上級生に不満を持った1年生や練習しない部員を疎ましく思う2年生も出て来たりしていて、下級生の不満について、一つ一つ解決しないといけない部長の立場の難しさが出ていた。ただの3年生なら、極論を言うと「部長や副部長がなんとかする」みたいに思ってしまうから、いざ部長の立場になってしまうと人間関係の調節に四苦八苦してしまう。先生と部員の中間管理職とも言えるので、久美子の仕事って本当に大変だと思う。

 今回の北宇治高校は、吹奏楽部の強豪校ということで、部員、特に3年生が『全国大会金賞』の目標に対してとてもシビア。下手な1年生に厳しく言う。勝利至上主義なのは良いと思うけど、下手な人は排除するという考え方は危険だと思った。非常に厳しい先輩に対して、ついていけるのは、「なにくそ!」と反発できるぐらい精神が強い子だけだし、大人しい子は心が病んでしまう。こういう所は難しいなと思う。本当の初心者で、0の状態(最低限の知識と技術がある状態)以下のマイナスの子は技術的な向上を実感しにくいから退部がちらつくと思う。実際に劇中でも、初心者への3年生の厳しい態度が問題になって、大量退部に繋がりかけたし、勝利至上主義というのは2面性がある。僕としては、あまりに厳しいのは勘弁だし、仮に金賞が取れなかった場合は、レギュラークラス以外は不満しか残らないわけで、偽りの達成感に浸る可能性が高い。

 正直、今作のアニメ化が決まっているが、以前まではとは雰囲気がかなり違って、非常に重い話になっている。読んだ後は、開放感があるけど、部活独特の雰囲気が、今のブラック企業に結びついてしまいヤキモキした。アニメも見てみたいけど、ある特定のキャラ達の人気が落ちそう(社会人から見るとあるキャラの行動がパワハラに見える)だし、割と見るのが怖い。まあ、プロローグとエピローグが個人的に気に入っているので、そこは楽しみだ。