人生のおつまみ

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『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』 の感想-阪大の学生と先生達が作った本。ドーナツの穴を学問的に定義するとどうなるのかがすごく気になった。

ドーナツの穴をどう食べるか、残すか。非常に哲学的な問題で、言われてみれば少し考えてしまう。穴にはドーナツの欠片はないわけで、空気の通り道のようになっている。その穴にはドーナツの構成分子はなく、基本的に空気しかない。それを食べる、残すというのは結構深くて難しい問題だ。身近な問題であるが、哲学的で面白く感じる。大学に入ったらこーゆー、一見無意味そうで、考えがいのある思考実験をどんどんしてほしーなーとは思った。ただ、大学生の時の自分に言ったとしても、表面ばかり考えて、哲学的に考えることはしかなかったはず。大人になったからこそ言いたくなってしまった。

 

学生間でドーナツの穴問題などの、哲学的な問題を議論するにはまさに大学生。遊ぶのはいいのだけど、学問をして頭を柔軟にして、大人になってほしいと思う。この本は学生の企画から始まったらしいのだけど、大学時代の思い出として残るし、就職活動の役に立つと思う。別に就職活動のためにしろとは言わないし、自分で考えて企画して実行するというのは仕事でも役立つこと。そーゆー経験を学生の頃にできるのは結構貴重だと思う。タイトルもよく考えているし、書籍としも魅力がある。


ところで、本を作る時には苦労しただろうなと感じた。大人、しかも自分よりも学術的な知見を数多く持っている先生と話すのはすごく大変なこと。理系出身の人だと分かると思うけど、自分と同じ分野の大学の先生と少人数で話す時にはすごく緊張する。知識・知恵のレベル差があるし、問題に対するの経験値もまったく違う。理系だと、数学・物理みたいに客観性の高い学問を学ぶ機会が多いから、自分のミスが間違っているとすぐに分かってしまう。そんな背景もあって、教授を筆頭に大学の先生と話すにはかなりの前準備が必要だったろうなと。先生の話す内容も本の執筆のために理解しないといけないし、自分の意見も出さないといけない。それは別に理系・文系は関係ない。阪大の学生と先生達が作っていたのだけど、さすがは阪大だなと思った。


個人的には、工学的にドーナツの穴を残す方法を考えた内容が良かった。ドーナツを真空蒸着させて全体をコーティングし、穴=コーティングの膜と定義するやり方。コーティングすることで、穴が定義されて、残すことができるようになる。実際にモノとして残すやり方だからインパクトがある。とはいえ、哲学好きの友人が見たら、哲学で残す方法、定義する方法に興味が行くだろうし、要は自分の興味ある、得意な分野で考えた方が答えが出やすいということ。思考実験として結構インパクトがあって面白いので、オススメだと思う。

 

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 (日経ビジネス人文庫)