人生のおつまみ

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『サブマリン 伊坂幸太郎 』 の感想-子供と大人の関わり方。働き方の中で転勤する時に給料を取るか家族との時間を取るかが気になってしまった。

重いテーマだが、劇中キャラの陣内のようにしっかりと自分の信念に則って冗談を交えながら話すというのは子供との対話として効果的かなと感じた。子供との対話がテーマの一つになっているが、大人が子供とどう接するかが問題にもなっている。子育てにも関係があって、いかに教育するか、いかに育てるかは人類がずっと悩んできた問題だと思う。しんどい内容だが、伊坂氏の軽快なリズムと展開で暗いテーマには希望らしきものが見えるようになっていた。チルドレンから時間が経ち、あくまで主人公へアドバイスする立ち位置になった陣内に好感を持ってしまった。

 

子供は感じなかったが、世界は想像以上に広い。小説を読んでいるとそれを感じる。大人になっても自分の知らない分野は数多くあるし、想像することも難しい。テレビやネットの中で世界でさえ、別世界にも思えてくる。そーゆーことを考えていると、子供というには非常に小さいが、だからこそ狭いコミュニティーの中で生きていかないといけないという難しさが出てくる。転職のように簡単に学校を移ることが難しい子供の頃、わがままと親に捉えられるかもしれないという恐怖。子供時代は自由だが、自分の力ではどうにもならない不自由さもあるということを感じた。


最近は、転勤などが働き方で問題になっている。給料が上がるが家族との時間が過ごせないという意見があった。今の時代はライフワークバランスが重要で、給料か家族との時間かで意見が分かると思う。今回の小説を見ていると、子供時代ってすごく大事で、親との時間の過ごし方が大切になってくる。全部が全部正解ではないけれど、転勤という選択肢の中で、家族との時間を天秤にかけることは、特定の職種では必ず出てくる問題。自分一人ならいいが、家族がいるならそりゃ一人の問題でなくなるわけで、そこら辺がこれからの働き方の問題だと思う。


重いテーマで大人と子供の関わり方が軽快だが正面から描かれていた。陣内のように、常識外のキャラがいないと、重すぎて話を展開させるのに苦労すると思う。伊坂氏の物語がそのようなキャラが当たり前に出てくるので、物語として非常に面白く読むことが出来てしまう。チルドレンの時には短編集的な構成だったが、今回は長編であり、前作よりも重いテーマが物語に関わってくる。陣内のように、一見破天荒でも、行動によって印象に残り、信念を曲げない人物はどうしたら生まれるのか、はたして現代社会で生きていけるのかと不思議に考えてしまった。

 

サブマリン (講談社文庫)

 

サブマリン (講談社文庫)

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チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)