人生のおつまみ

好きなことを基本的にはコラム形式で書いています。スポーツ、アニメ、書籍、産業をネタにしています。

『鳥居の向こうは、知らない世界でした。 友麻碧』ー女子大生の主人公が異世界の『千国』に迷いこむ話

女子大生の千歳が、神社の鳥居を越えて、『千国』という異世界に迷いこむという話になっています。そこで、薬師の零の弟子になり。様々な出来事を通して自分を見つめ直していきます。著者の友麻さんらしくて、料理も一つの軸になっています。男性でも女性でも楽しめて、ライトノベルに近いと思います。

主人公の千歳の境遇が結構悲しくて、血の繋がっていない母親と娘にいじめられたりして、かなり過酷な状況で暮らしています。父親も情けなくて、千歳を守ってはくれませんから。主人公としてはかなり厳しい環境ですけど、だからこそ異世界に行く必要があるのかなとは思います。ストーリーを読んでいくと、本当の父親は異世界人っぽい描写はされているので、これからの展開に期待したいです。

 

異世界ものなんですけど、千歳が可哀想に思えるので、千国では幸せになってほしいと思います。

 

千歳の環境をイメージして思ったのですけど、やっぱり自分に自信を持つためには、家庭環境って大事なんだなあと。義理ですけど、親から否定されたら歪みますよ。それでも、歪んでいない千歳はすごい。まあ、母親からしたら、血のつながっていない、夫の娘がいきなり来たら邪魔と考えるのは仕方がない部分もあります。最近流行の異世界ものですが、主人公が圧倒的に強いわけではなくて、ちょっとずつ自分を取り戻していく話になっているのが良かった。

 

 

【社会】『プレミアムフライデー』−まとめ・お客さんが来ずに通常営業に戻す話

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プレミアムフライデーが7月で半年を迎え報道が減少 客が来ず通常の営業に戻す店も - (1/1)|ニフティニュース

  • 今年2月からスタートしたプレミアムフライデーが、7月で半年、6回目を迎えた    
  • 飲食店経営者は「1時間早く開けるのはしんどい、5回目からは通常営業に戻した」と話す    
  • 「1、2回目はお客さんが来たなって感じはあったが、それっきり」と話す飲食店従業員も

 

プレミアムフライデー始まって、7月で6回目を迎えました。大手企業では、積極的にプレミアムフライデーに午後休の取得や3時退社するようにしているみたいですけど、サービス業にはそれほど大きな売上にはなっていないようですね。コンビニでは、限定スイーツなどが販売されていて、一消費者としては嬉しいですが、大きなお得感はありません。飲食業界ではもっと厳しいようで。

 

テレビなどでは、3、4時ぐらいから営業を開始する飲食店がありましたが、まだまだ厳しいとは思います。プレミアムフライデーが浸透していないですし、1時間早く開けても売上は大きく変わらないですから。それなら、普通に開けてじっくり準備するほうが良い。しかも、東京では、飲食よりも旅行業界に影響が大きい模様。確かに、金曜日の午後が休みなら旅行に行こうと思うのは、当然の流れ。

 

プレミアムフライデーも恩恵を受ける所と受けない所があると思います。コンビニなどは、新商品を投入できますし、営業時間も影響はありません。24時間営業で、限定スイーツなどが売れてくれるなら言うことなし。逆に、個人経営のお店などは、安い商品などで対抗するしかないわけなんですけど、1時間か2時間程度早く退社したからといって、そちらに中々お客さんは流れないですよ。結局、通常営業していた方が、メリットが大きい。1時間多く働いても、疲れるだけで打ち上げはそう変わりませんから。

 

何かの雑誌で、プレミアムフライデーにも大きな経済効果があると書かれてあったと思いますけど、それって、一部の大企業が恩恵を受けるだけで、ほとんどの業界には関係ないのでは?金曜日が休日になるなら影響も大きいでしょうけど、金曜の午後3時退社で大きく経済が変わるとは思えません。あくまで現時点なので、3年後ではまた変わった結果になっていると願いたいですけど、私なら3時退社しても、定時上がりと変わらない行動を取ると思います。

 

『どちらかが彼女を殺した 東野圭吾』のあらすじと感想ー加賀シリーズで犯人が最後まで分からない小説

OLである和泉園子は、ある日路上で絵を売っていた佃潤一と恋に落ちる。しかし親友である弓場佳代子に潤一を紹介して数ヶ月が経ったある晩、潤一から別れ を切り出される。潤一が佳代子に心変わりしたのが原因と知り、園子は深く絶望する。それから数日後、園子の兄康正は遺体となった妹を発見する。巧妙に自殺 を偽装されていたものの肉親としての直感から他殺であると看破した康正は、自らの手で犯人に裁きを下すことを決意する。やがて潤一と佳代子に辿り着いた康 正は確信する。潤一と佳代子、どちらかが彼女を殺した

 

東野圭吾さんのある意味で挑戦的な小説です。犯人が最後まで分からないストーリー構成になっています。内容を論理的に読んでいけば分かるらしいですけど、私は分からなかったです。文庫版では、ある一文が削られたらしいので、難易度がアップしているとのこと。分からなくても、最後に袋とじがついているので、正解にたどり着くことができます。

 

和泉園子が殺されて、容疑者が親友の弓場佳代子と彼氏の佃潤一に絞られます。探偵役としては、園子の兄の康正と加賀恭一郎の二人でメインは康正。妹の復讐に燃える康正が、犯人を追いつめていきます。物語の中では、加賀と康正の友情みたいな部分もあって、加賀シリーズとしてもかなり面白い。真犯人は、加賀の言動を注意してみると、分かるようにはなっています。彼らしくない、厳しい言葉を浴びせるので、何となく犯人にたどり着ける。この辺は、東野さんの優しさなんでしょうね。

 

この小説が発表された当時は、読者からの問い合わせが殺到したそうですが、私も気になりました。ミステリが好きで、犯人が分かるまで考える人ならともかく、私は最初はそこまで深く読み込みませんから、最初読んだ時には少しストレスが溜まりました。ただ、今の時代はネットの力で犯人が簡単に分かるので、同じようなスタイルの小説は出てこないかもしれないです。

 

犯人が分からないというのは結構ストレスが溜まります。私は気楽な気持ちで読みたいので、犯人が分からないとイライラしちゃいます。それが狙いかもしれないですけど、袋とじか何かでもっと簡単にまとめてくれると嬉しいなとは思いました。物語のメインは康正であり、加賀はサポート的な立ち位置です。何気に二人が居酒屋で語り合うシーンが良かった。男女間の関係がドロドロしている反面、同じ警察官としての話合いが緊張感がありましたから。加賀シリーズですけど、内容的にドラマ化は難しいと思ますが、結末をどのように表現するのかは気になります。

【読書】『悪意 東野圭吾』あらすじ・感想ー加賀が登場する人の恨みや嫉妬をテーマにした話

人気作家が仕事場で絞殺された。第一発見者はその妻と昔からの友人。逮捕された犯人が決して語らない動機にはたして「悪意」は存在するのか。

 

東野圭吾さんの小説で、人の悪意をテーマにしている話です。小説家の日高邦彦が死ぬ所から物語が始まり、国語教師の野々口修の手記から犯人が分かっていくという展開になります。東野さんの人気キャラ加賀恭一郎が探偵役として登場します。加賀シリーズで割とマイナーな作品ですが、私がお気に入りの小説であり、人間の『悪意』そのものにスポットを当てています。野々口の内面には、幼少期から刷り込まれた洗脳のようなものがあり、初めて読んだ時には衝撃的でした。

 

読みやすいけれど、人の怖さが分かってしまいます。社会人になってから読んでみるとまた印象が違うと思いますけど、私が読んだのは学生の頃だったのでインパクトがありました。加賀シリーズの中でも、異質な作品であり、ラストの章の語りは斬新です。単純な事件解決ではなくて、人の内面や恨み、嫉妬を感じることができ、こういう作品もあるんだなあと思いました。人の悪意とは?を真摯に問いかけています。

 

ただ、人の悪意をテーマにした作品が数多くあるので、それらを読んできた人なら物足りないかも。私が読んだ時には、ミステリにハマり出した時期なので、非常に興味深く読むことができました。犯人はすぐに捕まりますけど、真相に驚きます。人って大人になっても子供の時の悪い記憶は無くなりませんし、人生の残り時間が少なくなると、すごい行動力を発揮してしまう。それが悪意に繋がっていくんですよ。

 

同じような作品に、『殺人の門』がありますけど、こちらは違う視点からアプローチしています。『悪意』も『殺人の門』東野さんの中盤の作品であり、今の東野さんの書く小説とは異なる印象を受けます。私としては、初期や中盤あたりの小説が好きで、『容疑者xの献身』が一番好きです。何回も読んで、加賀のファンになったきっかけの作品でもあります。野々口の手記が絡んだトリックもあって、かなり面白い。加賀シリーズの中でも一番好きな作品なのですが、人によっては好き嫌いが別れると思います。

【読書・感想】『いま、会いにゆきます 市川拓司』ー男女愛、家族愛をテーマにした小説

話題になった恋愛小説です。主人公の秋穂巧と息子の佑司の元に、死んだはずの妻の秋穂澪が戻っていき、短い間ですが再び家族で過ごすという物語。恋愛要素とSF要素、ミステリ要素が盛り込んであって、男性が見ても楽しめる作品となっています。ベストセラーにもなり、映画化もされました。巧と澪を演じた、中村獅童さんと竹内結子さんが結婚したことでも話題を呼びました。当時流行していた純愛ブームにも乗ってかなり売れた作品です。

 

巧は市川さんの描く主人公らしくて、どこか頼りない雰囲気がありますけど、芯が強く、強い男性です。澪もかなり大きな決断を下して、巧と同じぐらい強い女性です。恋愛が8割ぐらいで、SFとミステリが2割ぐらいを占めている作品で、特に終盤の展開は涙を誘います。女性視点から見ると、巧は草食系男子みたいですけど、純愛小説の登場人物としては、最高だと思いました。魅力ある登場人物です。

 

終盤の展開は本当に良かったです。澪の大きな決断があってこそのエンディング。私がもし澪の立場だとしても、同じことができたかどうか。男女愛、家族愛をテーマにした作品の中でも分かりやすい愛の形。作者である市川さんの色も強くて、登場人物にクセはありますけど、傍若無人な人は出てきません。とっても優しい小説であり、ベストセラーになった理由も分かります。疲れている時に読むと、ストレスが発散できて、優しい気分になることができますよ。

 

10年前以上前の作品ですが、今読んでも感動して楽しむことができます。『君の名は。』が流行したので、恋愛やSF系の小説は共感しやすいと思います。ただ、私は学生の頃に読んだ作品なので、感想として、多少美化されているとは私は思います。物語を振りかえると、巧はもっと肉食系男子になった方がいいとか、多くの女性なら澪と同じ決断はしないだろうなとか。大人になると、男女の関係って複雑になりますし、ドロドロした感情も沸いてくると思います。それでも、理想の想いというのは持っていたいとは思いますが。

 

【読書・感想】『週末陰陽師~とある保険営業のお祓い日報~ 遠藤 遼』ー保険営業と人助けがメインな話

陰陽師を題材にした小説で、面白かった。主人公の小笠原真備、姉弟子の御子神ゆかり、式神の梨華、そして、女子大生の二条桜子がメインの登場人物として動いていきます。陰陽師をテーマとしたマンガや小説もありますけど、バトルがメインではなくて、営業の仕事をメインとして、人を助けていくという展開になっているので、スラスラ読むことができます。陰陽師の時と営業マンの時の真備のキャラが違うので、そこも魅力の一つだと思います。

小説の本編前に、登場人物の絵があるんですけど、かなり分かりやすくなっているので、この試みは続けてほしいなと思いました。真備は頼り無さげながらもかっこ良く、ゆかりはクールビューティーで、桜子は可愛いので、イメージを作るにはピッタリ。読んでいる途中でも、登場人物を改めて確認する時には多いに役立ちました。小説の登場人物が多くなると、キャラのイメージが抜けてしまうことがあるんで、ミステリでも参考にしてほしい。

ただ、この作品にも言えることなんですけど、表紙にメインキャラが描かれているからこそできるわけで、濃厚な本格ミステリだと難しいとは思います。ライトノベル寄りな作品がかなり増えている現在だからこそ、できる技かと。私は、キャラクターをアニメやマンガのように描いてもいいと思います。読んでいるうちに変わってきますし、最初のアクションとして、キャラをアニメ風に具現化させてもいい。その方が分かりやすいです。

この作品も『小説家になろう』に掲載されたいた作品のようで、分かりやすくスラスラ読めるのはいいですね。本格ミステリもいいですけど、身近な出来事をテーマにした作品は想像しやすくて、ストレスが溜まりにくい。陰陽師よりも、営業マンの日常の側面が強いので共感できる人も多いと思います。上手いこと、二つの職業をミックスさせた感じがして、ギャップを感じながら読めるのがいいなあと思いました。


営業の仕事、しかも保険の仕事って大変だと感じたのが素直な感想です。結構リアルに描かれていて、もちろんオブラートには包んでいるんでしょうけど、保険の仕事という仕事の側面を見れたのは興味深かった。カフェなどで保険の営業の方が必死に話しているのを思い出しました。登場人物のゆかりはかなり有能なんですけど、真備はいい人過ぎてお客さんを逃がしてしまうタイプですね。人が良すぎて、押し切れないタイプ。

主人公がいい人過ぎるというのは、小説などでよくあることなんですけど、陰陽師になると途端にかっこ良くなるという設定はやはり最高です。男性からしたら、そのギャップが理想で、普段は弱いけど、いざとなると強くなる。ドラマやアニメでも散見されるキャラですが、まさに王道です。桜子との関係も友達というよりは、幼馴染みに近い関係で、見ていてほんわかしていました。真備とゆかりの姉弟子の関係も、適度な上下関係があって、面白かった。


一番気になったのは、陰陽師にも政治力が必要だということ。真備は抜群の力を持つ陰陽師なんですけど、政治的には素人で、罠に嵌ってしまって、陰陽師の世界から追放されてしまいます。あくまで善意の人助けとして、作品の中で活躍している。どんなに力を持っていても、政治的なかけひきができないと成功できないというのはどの世界でも一緒だと思います。いい人だけだと他人に利用されてしまいますし、自分のエゴを出さないと人生上手くいかない。

抜群の力を持ってはいるけど、社会的にはそれほど力がない。自分に出来ることをするという意味では、真備の態度は正しい。だけど、真備にはもっと上に立つ力があるんだから、トップを目指してほしかった。この点はゆかりも言及していて、トップに立てる力があるんだったら、それを行使したほうがいいとは思います。それだけの力を持っている人は世間的に見たら少ないわけなんで。


この作品は、ジャケット買い、表紙で買ってしまうこともあると思います。可愛いタッチで登場人物が描かれているので、読んでみたくなります。保険の営業と陰陽師という、二つの職業を合わせ持った主人公の真備が、ゆかりや梨華と一緒に物事を解決していく。そして、そこに桜子も絡んでいって、物語が収束していく。読みやすいのでオススメです。バトルも少し出てきますけど、キャラの内面、過去にポイントを当てている作品なので、完全バトル物とは違います。

それにしても、登場人物全員がいい人過ぎるとは思いました。真備とゆかりの上司はともかく、主要な人物がいい人すぎて、ちょっと違和感はありました。ゆかりはもうちょっと黒くてもいいかなとか。でも、真備の過去に黒い人物が出てきているので、続編が出るとしたらその人と対峙するんでしょう。純粋でいい人が、黒い人と戦うことで、全員が良い方向に向かっていく。そんなストーリーだったらいいですね。

 

【書評・感想】『オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎』ー伊坂さんのデビュー作で、不思議な島の話

伊坂さんのデビュー作。ある独特な環境での島での物語。日本の法律があまり通用しない、日本ではない島。ある事件から逃げこんだ主人公が島の住人と不思議な出来事を通じて、物語が進んでいきます。不思議なカカシや銃を持つ桜が非常に大きなポイントになっています。

 

未来が見えるカカシがなぜ殺されてしまったのかが謎になっています。しかも人の言葉を話せるので、主人公など多くの島民がカカシを頼っている。かなり不思議なストーリーで、内容も深かった。伊坂らしく、残酷な描写が出てきます。

 

ただ、人によっては桜に嫌悪感も持つかもしれません。自分のルールで、「理由になってない」という言葉とともに人を撃つ怖いキャラクター。終盤では、主人公を陥れた残忍な人物と出会いますが、伏線も相まって勧善懲悪的な印象も受けます。カカシと桜という、二人のキャラが物語を引っ張っていました。

 

伊坂さんのデビュー作ですが、伏線の散らばり方が見事で、ラストで一気に回収していきます。とても心地よくて、ここに伊坂イズムが集約されています。伊坂さんの小説が好きなら、是非読んでほしい一冊。450ページ超えで分厚いですが、一気に読むことができます。

 

【書評・感想】『ビブリア古書堂の事件手帖 三上延』ーヒロインの栞子さんは将来母親と同じ道を歩みそう

鎌倉にある古書店が舞台の小説です。美人の店主とアルバイトの主人公が古書を題材にして、物語が進んでいきます。ヒロインの栞子さんは可愛いのですが、本に関しては強烈なマニアなので、そのギャップに驚きました。

 

栞子さんの母親も後々に出てきますけど、栞子さんと真逆で、押しが強くて自分の望みを優先させるため、少し不愉快になります。だからこそ、腕利きのビジネスウーマンなんですが。自分の望みを叶えるには、押しが強くないとダメかなあと思いました。

 

栞子さんはミステリで言う所の探偵のポジションなんですけど、本に関する探偵であり、古書を巡る金銭や感情の問題を解決していきます。私は栞子さんのキャラは好きですけど、彼女が大人になったらシビアで怖い人間になると思います。いつか、自分のお店の本だけでは満足できなくなって、人を裏切ってでも究極の本を探しにいくはず。栞子さんの母親と同じように……。

 

古書というマニアックなテーマでありながら、このシリーズは売上が良くて、累計600万部を突破しています。男性よりも女性に人気があるという不思議な作品で、女性から見ても、栞子さんは魅力ある女性ということなんでしょうか。

 

【書評・感想】『陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎』ー映画化もされた銀行強盗が主役の小説

4人の人間が銀行強盗をするという物語でした。銀行強盗の過程で、事件に巻込まれながらも、4人の 能力を活かして切り抜けていくストーリー。4人のコンビネーションが良く、それぞれの人物が興味深いので見ていて飽きなかった。

 

一般人なのに銀行強盗をするという、荒唐無稽の話の展開なんですけど、面白い人間描写で、ミステリではなくて、ほのぼの系小説に近いと思います。直接殺人を犯すわけでもなくて、重い話ではないですね。

 

主人公が嘘を見抜ける公務員で、その親友が演説の天才という異色のコンビが見ていて面白かった。それぞれのバックグラウンドはちょっと重い話があるんですけど、全体的にノリが良いので、サクサクと読むことが出来ます。伊坂らしいちょっと現実離れした話なんですけど、キャラがきちんと立っています。サブの登場人物も個性があって、これだけの人物を魅力的に見せるのはさすが伊坂さんだなと思いました。

 

映画にもなりましたけど、原作では恋愛要素はありません。4人のギャングはそれぞれの家族がありますし、とても大切にしています。家族愛的な要素はあります。続編も出版されていて、シリーズ化しています。ただ、監視カメラなどの発達で銀行強盗が難しくなっていると、最新作に描写されているので、新しい話は出てこないかもしれません。

【書評・感想】『ラッシュライフ 伊坂幸太郎』ー長編だけど、登場人物が魅力的で読みやすい

4人の人間が織りなす不思議なストーリー。短編が4つというわけではなくて、4人の話が微妙に繋がっていき、最後に繋がっていくという展開になっています。最初と最後に画商と女性画家が出てくるのですが、この作品を締める役割もあって、読んでいて面白かった。

 

人間にはそれぞれの人生があるけれど、伊坂節で見事に繋げているのが凄かった。伏線が素晴らしくて、黒澤という空き巣の話があるんですけど、最後まで読んでみると「あー、そうだったのかあ」と思わせてくれます。

 

現実的な話なんですけど、残酷な描写やありえないシチュエーションが出てくるんですけど、日常と上手くミックスさせているのが見事でした。黒澤以外の人物は人生の闇を背負っていて、結構シビアな話になっています。黒澤のキャラがすごく良いので、後のシリーズで出番が多くなっています。

 

伊坂さんの初期作で、非常に面白い作品。長編で長いですけど、読みやすいです。私は3回ぐらい読みましたけど、画商と女性画家がある意味で、現実を示していて、権力って怖いなあと思いました。最後に伏線からのどんでん返しがあるんですけど、登場人物が魅力的です。読んだ後に、人間って何だろうなあと考えてしまう作品でした。