人生のおつまみ

好きなことを基本的にはコラム形式で書いています。スポーツ、アニメ、書籍、産業をネタにしています。

面白かった本②

カラフル

 

カラフル (文春文庫)

 

 自殺を図った中学三年生・小林真の体にホームステイした「僕」と、真をガイドする天使のプラプラが、子供の思春期を共に生きていく青春・家族ストーリー。真の家族関係はとっても複雑で、不倫、喧嘩、意地悪など普通の家族ではない。その中でいかにして真が生きていくか、ホームステイしている「真の体」の本質が問われていく。
 
 相棒とも言える、天使のプラプラが二枚舌で、一見優しい天使に見えるが、真と二人だけになると、本性が出てきて、ヤンキーみたいな怖い存在になる所が面白い。実際にもこんな人はいると思うけど、いじめ・意地悪が目的ではなくて、本気で真のことを考えているのがすごい。仕事以上に、自分の感情を出して真を励ます姿に感動する。
 
 正直、小学生・中学生用かなとも思ったけど、心が弱っている、メンタルがおかしくなっている時期に見ると癒される。自分のことを好きになってくれている異性の子って意外と自分で気づけないとか、見ていて思い出した。そういうのって、同窓会とかで初めて知るんだけど、その時知っていれば何か変わったかもとか思ったり。
 
 中学生がメインの登場人物だけど、父親、母親、兄、同級生などが密接に絡み合って、人生って何だろう的なことを考えさせられる。カッコいい主人公じゃないけど、滅茶苦茶共感できたりして、見ていて印象に残る本になってる。中学生らしい行動だと思うんだけど、
 

告白

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 

 

 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年に警告し、復讐をしていくという話。教師にとって、少年は許せる存在ではなく、二人に残酷までの復讐をしていく様は恐怖の一言。特に序盤の展開は恐ろしくて、教師の独壇場であり、読む手が止まらない。現代の問題点にスポットを当てている作品。
 
 ネットの感想などで見たけど、この作品は中盤から終盤で息切れしているという意見があった。少年の一人には、ある病気についての警告をして、生きることの辛さ、将来への絶望を植え付けるけど、主犯格の少年への記述は少なかったと思う。まあ、最後には、自分の手で復讐をする予定だったのかもしれないけど、少年への対決という場面を作ったのかもしれない。
 
 家族愛を題材にしているけど、少年への母親への愛が描かれていて、なんか複雑。最初は、完全な悪として少年を描いていたのかもしれないけど、最終的に良心を残すことにしたのは、編集側からの意見があったのかもしれない。まあ、興味深く読むことができたから、展開的にはどちらでもいいとは思ったけど、短編集的なものを出してほしいとは思う。
 
 少年法で守られた未成年を、自分の手で裁くというのは、よくあるストーリー展開だけど、とんでもなお復讐心と、教師から見た少年への恨みが描かれていて、デビュー作とは思えないリアリティーがあった。湊さんの作品は人気があるけど、その土台にはこれほどの

 

イニシエーション・ラブ

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 

 主人公の僕と恋人のマユを軸に、前後編という形で物語が進んでいく。ラストを先に読まないでと帯に書かれていたと思ったけど、究極の叙述トリックなので、読んだら面白さは半減すると思う。静岡と東京の遠距離恋愛で、男がどんどん都会に塗れて変わっていく姿は男性視点、女性視点で見ると印象が変わってくると思う。ラスト数行はまさに衝撃的。

 男性が悪いとは思うし、東京は怖い所というイメージになってた。遠距離恋愛って難しいけど、男女をつなぎ止める絆は、小説やマンガと違ってあっという間に崩れてしまいがち。実際に作者が体験した恋愛観も入っているのかもしれないけど、もうちょっとやり方があったのでは、別れないですんだ未来もあったのではないかと思った。
 
 主人公は進んで東京に行ったのではなくて、能力が高いから東京本社に行くという展開。最初は、マユを大切に思っていたけど、東京での魅力的な女性、東京ー静岡の移動の疲れ、日々のストレス、マユとのすれ違いなどで、その関係は徐々に崩れていく。読んでいて悲しかった。学生の頃に読んだので、主人公の「僕」って最悪だなと思った。
 
 だけど、社会人になってみると、遠距離恋愛に限らず、現実的に距離のある人との付き合いは難しいし、価値観の共有は不可能に近い。身近にいたら簡単に解決できる問題も、遠距離になるだけで、修復不能になってしまうのは、その人との縁の切れ目ということなのかとも思ったりもする。男女の非常に悲しくも難しい話だけど、実際には似たような話はあるんだろうなあと思った。