【書評と感想】大塚明夫さんの声優魂を読んで思うこと 声優は何も生み出さない?
大塚明夫さんの『声優魂』という新書を読んでみました。アニメとか吹き替えで活躍中の大塚さん。業界の裏話が赤裸々に語られています。声優って大変な仕事ですよね。声に気を使う必要がありますし、特に女性は10代で仕事を始めないと、将来性がほぼ皆無とのこと。
怖い世界ですが、思ったことを書いて行きます。
漫画は一人でも生み出せるが声優には作品が必要
本に書かれてあったことに、声優は一人では何も生み出せないということ。もちろん、ベテランとか人気声優になれば、ネームバリューでグッズや本などを生み出せますが、若手は無理です。
漫画家はどんなに若くても、作品を生み出す立場なので、出版社に持っていったり、ネットで公開するなどで、それがお金になるチャンスがあります。
しかし、声優は作品がないと、何もできません。声があっても、それだけでは飯の種にならない。そういう意味ですごく弱い立場とのこと。
つまり、常に受けの立場。自分からアクションをしようとしても、何も生まれない。そういう立場だからこそ、大塚さんは声優というのは非常に厳しいと言っていました。
声優は芸能人?
声優は芸能人です。芸で勝負していますから。ただ、世間でいうのは、テレビに出演している人を芸能人といいます。ただ、そういう芸能人の方は、声優と違って勝負できる分野が広いです。
声優や吹き替え、ドラマ出演、地方営業、エキストラと、声以外の実写の仕事ができるのが大きいですね。声優というのは元々、俳優の副業という立ち位置だったみたいで、今ではそれが独立しています。
だからこそ、芸能界の中でも特に厳しく、長続きできない仕事と言えます。
声だけだからこそ難しい
漫画とは違って、声の仕事は、自分からアクションがとれません。作品があって初めて活躍できる可能性があります。ブレイクしたとしても、漫画のように長続きするかどうかわかりませんし、ランク制という年を取れば取るほど仕事がとり難くなるということにもなります。
声だけの仕事って本当に難しい。職人技なんですが、だからこそきちんとした方向性が必要になってきます。要は、方向性がないとすぐに淘汰されるということ。
女性はアイドル路線から入るのが安定?
女性声優はアイドル路線から入るのが鉄板らしいです。特に若さというのが一つのネックになっていて、20代後半になると、実績がないとほぼ仕事が貰えなくなるそうです。ランク制もあって、ギャラだけが上がっていくので、それまでの実績がすべて。
男性は違っていて、年齢はそれほど関係なく、20代後半で業界に入っても、売れることはよくあるそうです。そう考えると、女性にとって声優を目指すというのは、試練の道なんですね。
年齢制限が暗に設定されていて、難しい業界と言えます。大塚さんの本の中で、業界的には若くはないが、ずっと声優を続けるために、できるうちにアイドル声優の仕事をしている声優さんがいるらしいです。
そういう路線が今のブレイクする最短ルート。批判があっても、アイドル路線は売れる可能性が高くなるということです。
まとめ
- 漫画に比べて、声優は作品がないと何も生み出せない
- きっちりとした方向性が必要
- アイドル路線がブレイクする最短ルート
感想
声優って難しいです。正直な話、男性よりも女性のハードルがすごく高いと感じます。若いうちに業界に入らないと、そもそも活躍する機会を失ってしまう。
私は年齢は関係ないと思うのですが、最近はそうではないようです。
声優もルックスが大事?
最近の声優にはルックスが必要になってきています。顔出しイベントも盛りだくさんで、昔のように顔出しNGということは減ってきています。そう考えると、スポンサーとしては、売れる若い子を使うのが当たり前で、若い女性でないと、そもそも売り出してもらえません。
年齢は関係ないと思いますが、今はそういう時代なんですね。私は、上手ければ年齢は関係ないですし、作品に合っているなら、それでいいと思います。ただ、お金を大量に落とすかといえばそうではないですし、好きな作品でないと、アニメとか映画のDVDは購入しません。
お金を落とすのは、若い子に群がる大量のファンなわけで、ネットの時代の今、そういうスタイルが手っ取り早くお金を稼げる方法なんでしょうね。
男性はどうか?
見た感じ、男性だと年齢は関係ないみたいですね。そもそも男性は、アイドルで売れなくても、年を経てダンディーなスタイルで売れる人もいますし自由度が高くなっています。30代で業界に入る人もいるぐらいなので、売ろうとやる気があればなんとかなりそう。
売れる道も様々で、アニメだけでなくて、吹き替えでブレイクする人もいたりして、状況は様々。小山力也さんも吹き替え作品で有名になりましたし。
声優の仕事は奪われて行く?
大塚さんの話の話にプラスするなら、声優の仕事はだんだん狭まっていっています。芸能人が吹き替えをする映画も増えました。仕事がだんだん奪われていっています。
昔は声優は俳優のアルバイト、みたいな感覚だったのが、今は市場が大きくなってしまったので、どんどん進出する人が増えています。
芸人やアイドルが吹き替えをするのが当たり前の世の中。ベテランでも、クビを切られる業界なので、本当にしんどい話だと思います。
元々厳しいのも、活躍する場所も減ってきている。これから先、どうなるんでしょうね。
若いうちに辞めるもの一つ
最後に思うのは、若いうちに辞めるのも一つの手段だと思います。特に20代前半で辞めるなら、再就職は比較的容易ですし、大学に入り直すことも可能です。大学に20代後半まで入っていて、割といい企業に就職できた人もいますから、若いとチャンスがあります。
大塚さんの話で思ったのは、ダラダラ続けると人生終わるということ。声優になって何がしたいのか。その想いがないと、時間の無駄になってしまって、気づいたら売れない30代ということもあります。
そうなると、社会経験がほとんどない社会人となってしまって、就職できる業界が極端に狭まってしまいます。人生がベリーハードモードになるので、かなり危険。
私は東野圭吾さんの本が好きなんですが、東野さんは作家になると決めたとき、5年をタイムリミットと設定したそうです。5年経って作家になれなければ、一流のエンジニアを目指そうと(東野さんは某企業のエンジニアでした。失敗ばかりでかなり辛かったそうですが)決意して作品を書き始めました。
きちんと年数を設定して、目標を決めて仕事をしていくことが、声優で成功するポイントなんでしょうね。
私はもし、子供がいて声優になりたいと言い出したら、5年は我慢します。それで売れなかったら、大学に入って就職しろと言いますね。そうしないと、人生無駄になると思いますし、経験が生きないですから。ビジネスで仕事をするのに時間制限は非常に有効と言いますが、人生に置いても、やることに時間制限をかけるのは大切ってことです。