人生のおつまみ

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【読書】『君の名は。』の感想:王道のボーイ・ミーツ・ガールも大切だが、伝承を伏線にしたSF要素も大ヒットの要因だったのでは?

君の名は。』はまさに王道。少年が少女を救うために、全力・命を懸ける。学生までなら、直接感情移入できますけど、社会人になると思い入れの仕方が変わりますね。上から目線ではないですけど、「ここで動かなきゃ男じゃないぞ!」みたいに励ます側に立って見てしまいます。高校生の時なら、絶対助けるぞ!みたいな感覚で、それこそ自分だったらこう助けるみたいな感じでイメージしたと思います。大人になると、どうしても人生経験からの対応の仕方が癖になってしまって、直接主人公やヒロインに感情移入するのが難しくなりますね。王道だからこそ、分かりやすいストーリーになっていますし、どの世代の方が見ても同じように(心の中では人生経験から来る感動がある)、楽しめるのだと思います。その意味で、『君の名は。』は映画界を変えたと思います。2016年以降、『君の名は。』に似たような展開のアニメ映画が増えました。でも、完成度では『君の名は。』が一番。邦画やアニメを見ていると、『王道』の物語が増加したように感じます。まあ、共感されやすいですが、変に捻るよりも王道の物語は分かりやすいので、観る方としては楽しめます。映画って見やすいことも条件の一つだと思いますね。やっぱり、利益を出すことって重要なので。

 

 

ストーリーとして、ボーイ・ミーツ・ガールは感情移入しやすいと思います。小さい頃に異性のために、頑張った経験がフィードバックするからじゃないかなあと。ラブレターだったり、プレゼントだったり、それこそ困っている時に助けてあげたいとか。大人になると簡単ではないですが、少年・少女時代特有の雰囲気を思い出させてくれるのではないかと。広告動画を見ても、入れかわりがメインで、後半ストーリーには一切触れていません。あくまで、高校生の男女が日常の中で、擦った揉んだして、それが恋愛感情に変化していく過程を想像させてくれます。高校生と言えば、経済面を抜きにして、その人個人を好きになれる時代で、純愛に代表されるピュアな恋をイメージさせやすい。そこに監督の腕が要求されるのですが、新海監督は上手くSF要素とミッスクさせました。前半の日常パートとか後半の非日常パート。入れかわりという非日常はあるのですが、単純な恋愛の装置ではない使い方をしたことが評価されたポイントに思います。新海監督の『天気の子』も同じような手法がありましたが、「僕たちにはああいう時代があったなあ」と思い出させてくれます。

 

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君の名は。』はSFと混ぜたのが良かった。隕石落下シーンは度肝を抜かれましたし、図書館のシーンは非常に悲しかった。前半の明るさとは極端に違うシーンで非常に印象に残っています。『君の名は。』が評価された一つはこのシーンなんでしょうね。人はギャップに惹かれると言いますが、映画のギャップは凄まじかった。初めて観た時にはビックリしましたし、長く印象に残るシーンになっています。物語には『起承転結』が基本にありますが、この『転』が部分のインパクトが大きかった。悲劇的なシーンからのハッピーエンドも良かったですが、中盤での隕石落下という衝撃度が大きいからこそのシーンとなっています。隕石にしても、序盤から神社の伝承という形で伏線がありますし、SFと言っても、自然と伝承、日本に関わりがある事柄なので、僕たちの心にふっと入ってきました。日本らしい物語の展開で何度見ても面白い。映画館で何回も見た甲斐があります。それぐらい衝撃度が大きく、何回見ても良い作品。王道ですが、インパクトがあり、何度見ても新しい発見がある。君の名は。』にはパワーがありますが、その中に含まれる人間と自然の関わり方が僕の心に刺さって記憶に残ります。

 

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映画というか、物語は分かりやすい物語が良いです。分かり難い物語にも需要がありますが、マニアックになりやすいですから。別に『君の名は。』も難しい部分があって、何回も見ないと分からないシーンもあったりします。小説などで補間はされていますが、鑑賞者の想像に任せている部分があるのも事実。分かりにくと、何度も観る必要があるから、興行的には難しいです。『君の名は。』は一回観ただけで感動できますし、多くを理解できます。僕は分かり難い物語も好きで、メモに落とし込んで色々考えるのが好きです。ただ、映画では分かりやすく、小説などで細かく補間する的な楽しみ方も面白い。多くの人に受けるやり方ではないですが、映画を好きになるのでオススメです。映画業界は観賞の値段の高さからか、全年代で映画鑑賞が低下しているそうです。映画館に人を呼ぶには、万人に受ける作品も必要で、収入の柱になる必要があります。動画サイトの発達で益々映画鑑賞する人が減っている現在では、インパクトのある作品が求められているように思うんです。『君の名は。』は一つの答えを示していて、そのまま同じでは駄目ですが、王道の大切さを僕に教えてくれている気がします。

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