人生のおつまみ

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【感想】芦田愛菜主演の『星の子』宗教と家族とは何か?

星の子

 宗教にハマっていく両親に対して、信じること、生きる事を正面から考えさせてくれる作品。人間って病気などに対して、医療以外のやり方で治ってしまった場合、宗教にハマってしまうのは仕方ないのかもしれない。弱っている時に、救ってくれる存在が出てくるとそれに依存してまうこともあるだろうから。とはいえ、この作品では、次女の病気と長女の家出によって宗教団体を深く信じてしまうことになる。正直、見る前は、怖い印象があったが、常時次女のちひろ目線で物語が進んでいくので、高校生にも共感できる場合があるかもしれない。救うことが主眼ではなくて、流されながら生きていくことが大切だと説く。宗教の怖さよりも、両親を信じているけど、まわりから見えると狂気にしか見えない苦悩は想像を絶する。とはいえ、禁止されているコーヒーを好んで飲むあたり、年頃の高校生らしさも垣間見ることもできる。自分が信じているものに対して、他人がそれを否定すると過剰に反発してしまうことは宗教だけではないと思う。

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

 

 両親に対して何を感じるかは人それぞれだけど、実際にはかなり怖い。他人を頼れる状況でも無い限り、どうしようもないこともある。思春期に両親とどう付き合うかは、長年人間が取り組んできた問題であるわけなんだけど、いろんなパターンがあって、一つの法則みたいなものはない。それでも生きていくわけで、人間は難しい。ラストに関しては、よくわからないし、理解できないなと思った。星を見上げて解決らしい解決もないから未来が見えない。どーゆー人生を選ぶか分からないし、視聴者が想像しろと言われても材料が少なすぎる。カタルシスがないので、盛り上がりもないから、日常の延長線上にある物語ともいえるからこそ、見る人によっては感動する。子供の視点から見たら、かなり過酷でどんどん疲弊していく。なのに、両親は困窮しても、精神的には満足であり、そのギャップに苦しむこともなる。恋愛も奇妙な行動を取る両親によって失恋してしまうし、中々前向きな出来事がない。両親を信じたいと思うのは自由だけど、客観的に見ると自活するのも難しく、親類が助けたくなる気持ちは分かる。

重力ピエロ

 家族をテーマにした小説で、伊坂ワールド全開な作品。今でも思い出すことが多くて、伊坂作品の中でも印象に残るものになっている。家族って難しいけど、血がつながらないからこそできることもあり、つながりもある。言うのか簡単だけど、行動するのは難しいという言葉通り、作品内でも苦悩の表情が描かれている。家族をテーマにした小説は数多いが、ありそうでなさそうな雰囲気にするのはさすがの伊坂さんだと思った。主人公と弟と父親の関係が良くて、血のつながりのない父親と弟の関係性がすごく印象的で、何度も読み返すぐらいだった。実際に行動に起こす主人公と弟が同じだったのはすごいなあと思ったし、結末はハッピーエンドとは言えないけど、説得力がすごくあった。何でもかんでも割り切れないからこそのラストである。血のつながりのない家族も陳腐と言われるぐらい数多くの作品があるが、家族と聞いてイメージするのはこの作品だった。

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

 

AX

 こちらも伊坂作品で家族をテーマにしている。殺し屋の父親が家族に内緒で仕事をこなしながら、どのように仕事を辞めるかを悩みながら物語が進む構成になっている。恐妻家である主人公なのだけど、殺し屋という仕事にギャップを感じる。伊坂さんは、殺し屋シリーズを書いていて、これまでの作品も印象深かったが、これか殺し屋で恐妻家というギャップで印象に残る作品となっている。短編集とも言えるのだけど、伏線があるので、読んでいて集中できる。家族が第一なのは分かるけど、仕事のことを考えると、中々転職することができなくて、やはりお金が掛かってしまう。恐妻家だからこそ家族を大切に思えるし、人のことを大事に思う心もある。主人公が変わったのは、奥さんと出会ったからであり、人間出会いで結構変わってくる。友達や恋人の出会いが人生の分岐点というのはままあること。

AX アックス (角川文庫)

AX アックス (角川文庫)

 

 

星の子 (朝日文庫)